ON1 Photo RAWの最新アップデート2026.3が、2026年3月に無料アップデートとしてリリースされました。拡散モデルを使ったAI拡大機能、シネマティックな深度ライティング、ワンクリックマスキングなど、実用的な新機能が多数追加されています。
この記事では、ON1 Photo RAW 2026.3の主要な新機能と改善点を一つずつ解説します。サブスクリプション不要の買い切りRAW現像ソフトとして、どこまで進化したのかを見ていきましょう。
Resize AI 2026が内蔵:2つのAI拡大モデル
AI拡大機能のイメージ
ON1 Photo RAW 2026.3の目玉機能の一つが、Resize AI 2026の完全内蔵です。これまで別製品だったAI拡大ツールがPhoto RAW内で直接使えるようになりました。
Highest Qualityモデル(拡散ベース)
拡散AI(Diffusion AI)を活用し、自然なテクスチャとエッジを再構築する最高品質モデルです。以下のような場面で威力を発揮します。
- 大幅にトリミングした写真の解像度回復
- 小さな画像やAI生成画像のアップスケール
- ノイズの多い高ISO画像の拡大
拡散モデルは単純な補間処理とは異なり、ピクセル単位でディテールを「再構築」するため、拡大後も不自然なボケやジャギーが発生しにくいのが特徴です。
Standardモデル(バッチ最適化)
速度とパフォーマンスを重視したモデルで、大量のバッチ処理に最適化されています。
- 古いGPUやスペックの低いマシンでも安定動作
- 高ISOや圧縮率の高いファイルでもクリーンな結果
- イベント撮影など大量の写真を一括処理する場面に最適
用途に応じて2つのモデルを使い分けられるのは実用的です。1枚にこだわるなら「Highest Quality」、大量処理なら「Standard」という棲み分けですね
Resize AI 2026はPhoto RAW 2026.3に含まれるため、別途購入する必要はありません。2026オーナーなら無料で利用できます。
シネマティック深度ライティング:AIで奥行きを操る
深度ライティングのイメージ
新しいDepth Lightingフィルターは、AIが生成する深度マスクを使ってシーンのライティングを後から調整できる機能です。
できること
- 前景と背景の明るさを独立して調整:被写体を明るく、背景を暗くするといった操作がワンタッチ
- フォーカスとムードの制御:奥行き情報を使って、映画のようなライティングを再現
- 手動マスキング不要:AI深度マップが自動でシーンの奥行きを判別
従来、こうしたライティング調整にはPhotoshopでレイヤーマスクを作り込む必要がありました。ON1 Photo RAW 2026.3では、フィルターを適用するだけで同様の効果が得られます。
Split Fieldフィルター
合わせて追加されたSplit Fieldフィルターは、写真の2つの領域に異なる調整を適用し、スムーズなグラデーションで遷移させる機能です。映画で使われるスプリットジオプター効果をシミュレートでき、風景写真で前景のディテールを維持しながら背景を拡張するといった使い方ができます。
深度ライティングって具体的にどういう場面で使うんですか?
たとえばポートレートで背景が明るすぎて被写体が暗く沈んでしまった写真。深度ライティングなら被写体だけ明るくして背景は抑える、という調整が一瞬でできます
ワンクリック被写体・背景マスキング
マスキング機能のイメージ
ON1 Photo RAW 2026.3では、ワンクリックで被写体と背景を自動的にマスキングできるようになりました。
主な改善点
- 1-Click Subject Masking:被写体をワンクリックで自動選択。人物、動物、車両など幅広い被写体に対応
- 1-Click Background Masking:背景を一瞬で選択し、ぼかしや色調整を適用可能
- マスクエッジの改善:従来よりもクリーンで精密なエッジ処理
- マスクの組み合わせ:複数のマスクをスタック・結合して、より高度な選択範囲を構築
Lightroom/Camera Rawのマスキング機能に匹敵する精度を、ON1でも実現できるようになったといえます。
AIマスキングの精度は被写体のコントラストや複雑さによって異なります。髪の毛など細かいエッジでは手動での微調整が必要になる場合があります。
Effectsモジュールの強化:Starting Points
エフェクト機能のイメージ
ON1 EffectsモジュールにStarting Pointsが追加されました。これはお気に入りのフィルター設定をワンクリックで適用できるプリセット的な機能です。
Starting Pointsの特徴
- フィルターの組み合わせを保存してワンクリックで呼び出し
- 編集の出発点として使い、そこから微調整を加えるワークフロー
- 複数のフィルターを一括適用できるため、作業時間を短縮
また、新たに追加されたDouble ExposureフィルターやMotionフィルターと組み合わせることで、クリエイティブな表現の幅が広がっています。
Starting Pointsは、毎回同じフィルターを手動で重ねていた人にとって時短になる機能です。お気に入りの「レシピ」を保存しておけるイメージですね
パフォーマンス改善とネガフィルム変換
パフォーマンス向上のイメージ
macOS GPU高速化の復活
ON1 Photo RAW 2026.3では、macOSでのGPU高速化(GPUアクセラレーション)が復活しました。以前のバージョンで一時的に無効化されていた機能ですが、再び利用可能になっています。
フォルダブラウジングの高速化
新しいフォルダを開いたり、大量の写真をブラウズする際の速度が体感できるレベルで改善されています。大規模な撮影ジョブや頻繁にインポートを行うフォトグラファーにとって、地味ながら嬉しい改善です。
Auto Levelの一貫性向上
Auto Level(自動水平補正)ツールが改良され、類似する画像に対してより一貫した結果を出せるようになりました。イベント撮影やウェディングなど、似た構図の写真を大量に処理する場面で効果を発揮します。
ネガティブモードの改善
フィルムスキャナーでスキャンしたネガフィルムをポジ画像に変換するNegative Modeが改良されました。変換時の色精度とトーンの初期値が向上し、フィルム写真のデジタイズ用途としても実用的なレベルに近づいています。
ワークフロー改善:カラーラベルとフォルダ表示
ワークフロー改善のイメージ
カスタマイズ可能なカラーラベル
環境設定からカラーラベルの名称を自由に変更できるようになりました。たとえば以下のようなワークフローに対応できます。
| カラー | カスタム例 |
|---|---|
| 赤 | 要レタッチ |
| 黄 | クライアント確認中 |
| 緑 | 納品済み |
| 青 | SNS用 |
| 紫 | ポートフォリオ候補 |
Grid Viewでのフォルダ表示オプション
Grid View(グリッド表示)で、フォルダを写真と一緒に表示するか、非表示にするかを選択できるようになりました。フォルダを非表示にすれば、写真だけに集中できるすっきりしたブラウジング体験が得られます。
パースペクティブ補正の改善
建物の傾きを補正するPerspective Correctionが改良され、補正後に発生していた黒い角(ブラックコーナー)が解消されました。建築写真のワークフローが効率化される改善です。
- 2026オーナーなら無料でアップデート可能
- 拡散AIベースの高品質な画像拡大
- ワンクリックマスキングで作業効率が大幅向上
- macOS GPU高速化の復活
- 買い切りライセンスでサブスク不要
- 拡散モデルの拡大処理は高性能GPUが推奨
- LightroomやCapture Oneと比べるとカメラ対応数で劣る場合がある
- Highest Quality拡大は1枚あたりの処理時間が長め
まとめ
ON1 Photo RAW 2026.3は、2026オーナーであれば無料で入手できるアップデートでありながら、充実した内容に仕上がっています。
- Resize AI 2026内蔵:拡散ベースの「Highest Quality」と高速バッチ向け「Standard」の2モデル
- シネマティック深度ライティング:AI深度マスクでライティングを後から調整
- ワンクリックマスキング:被写体・背景を一瞬で自動選択
- Starting Points:お気に入りフィルターをワンクリック適用
- パフォーマンス向上:macOS GPU高速化復活、フォルダブラウジング高速化
- ネガフィルム変換改善:色精度・トーンの初期値が向上
ON1 Photo RAWは買い切りライセンス(新規$99.99〜)で入手でき、サブスクリプションに抵抗があるフォトグラファーにとって有力な選択肢です。30日間の無料トライアルも用意されているので、まずは試してみてはいかがでしょうか。
Photo RAW 2026のオーナーであれば、2026.3へのアップデートは無料です。新規購入の場合は$99.99〜(買い切り)、またはMAXサブスクリプション$79.99/年で利用できます。
1枚にこだわって最高の画質を求めるなら「Highest Quality」(拡散AIベース)、イベント撮影など大量の写真を一括拡大するなら処理速度重視の「Standard」が適しています。
ON1 Photo RAWはLightroomカタログのインポートに対応しています。RAW現像、マスキング、エフェクトまで1本で完結するため、Lightroomの代替として十分検討できるレベルです。ただし、対応カメラ・レンズプロファイルの数ではLightroomが優位な場合があります。
macOSとWindowsの両方に対応しています。AI拡大の「Highest Quality」モデルを快適に使うには、ある程度のGPU性能が推奨されます。「Standard」モデルは古いGPUでも安定して動作します。
参考: ON1 Photo RAW 2026.3 Update: Faster Performance, Workflow Improvements & AI Enhancements